sabakubakubakuの日記

発達障害児を育てる発達障害ワーキングマザーの日記

脳神経の刈り込み不足

ここ数日間の間に2回、自閉症の原因は脳神経の刈り込み不足ではないかという説が有力視されている、という情報に触れた。1回目は週末に受講した愛着障害のセミナーで聞き、2回目は最近出版されたばかりの書籍、「ハイパーワールド 共感しあう自閉症アバターたち(著:池上英子)」で読んだ。いずれもアメリカで活動されている方の話なので、最新の脳科学の研究結果なのかも知れない。

 

人間の赤ちゃんの脳は2、3歳くらいまでに大人の脳のほとんどが完成するそうで、脳神経が刺激に応じてどんどん発達するが、使わない、いらないと判断された脳神経は刈り込まれていくらしい。自閉症児の場合、この刈り込みがうまく行われず、脳神経が過剰に発達してしまい、あちこち繋がりすぎて、様々な支障が生じてしまうのではないかという事だった。

 

直感的に、なんとなくそうなんだろうなあという印象を受けた。自閉症の特徴のひとつに、感覚過敏があると思う。ある触感がダメだったり、音や光の刺激に弱かったりというあれだ。また、カメラアイや絶対音感のように、視覚や聴覚が並外れている場合もある。音や文字に色や味、においが伴っているように感じる「共感覚」も自閉症者に多いと聞いた。画像や音は、目や耳で受信した情報が脳に伝わることで意識できるのだから、脳のあちこちがつながりすぎているとしたら、伝わり方が過剰になったり、他の情報と混ざってしまったりするということは、何だか自然な現象の様に思える。

 

実際、3歳の自閉症児定と型発達児の脳を比べると、自閉症時の脳の方がいくらか大きいのだそうだ。また、非常に優れた視覚と空間認知能力で有名なテンプル・グランディン氏は、著書の「自閉症の脳を読み解く」の記述によると、脳スキャンの画像を見ると実際にある特定の脳神経が視覚を司る部位に入り込んで発達しているらしい。そのために視覚記憶がずば抜けているのだろう、と書いてあった。

 

もしも、この刈り込み不足が原因で自閉症が発生するのだとしたら、じゃあなんらかの方法で脳神経を刈り込めば、自閉症が「治る」のだろうか。実際、脳神経の刈り込みに関係するらしい遺伝子などについての研究も進んでいるらしい。確かに、自閉症で困っている本人、何とかしたいと思っている家族、その他いろいろな人たちにとって、もし自閉症が「治る」のだったら願ってもないことなのかも知れない。

 

でも私は、自分自身のことについて言えば、自閉症スペクトラムからもたらされている様々な特性を失うということに、どうしても抵抗を感じてしまう。少し前に、ようやくADD/ADHDという診断を受け、コンサータストラテラを処方してもらえる事になったときに、もしこれを飲んで、いままでの自分らしさが消えてしまったらどうしよう、としばらく服薬をためらっていた時のことを思い出す。

 

遺伝子を操作する技術が進歩して、そのうち知能や容姿、身体能力を自分の好きなように作り替えることができるようになる日がくるのかも知れない。その時、脳の配線も自分で操作して、自閉症らしさを完全に排除して、ものすごく標準的な「定型発達者」の神経回路に「整える」ことが可能になったりしたとして、そんな「標準的」な人間に、自分はなりたいだろうか。自分の子どもを、庭の植木を整えるように、刈り込みたいと思うだろうか。そして、そんな風に人々が均質化されたとしたら、人間は生き物として、環境の変化に弱い種になってしまうのではないだろうか。

 

自閉症の生きづらさに苦しんでいる人々にとって、困難を解消したり低減する方法が見つかるのは、福音なのだと思う。それを、誰が、どこまで、どのように、実行するのかと考えると、何となくいろいろもやもやしてしまった次第である。